私は、何年もスマホ中毒だ。電池の減りも早いのでモバイルバッテリーを持ち歩き、こまめに充電しても帰るときは10%以下。
別にスマホゲームをしたり、何度もメールを見返しているわけじゃない。ただ、元カレのSNSを見て、待っているだけ。
目次
- 元カレのSNSを見つけた恋愛難民の私
- 元カレに彼女はいないみたい!
- 占いに出てる“思ってもみなかった縁”
- 近づいてくる彼との運命
- 音信不通の片想い? 彼と会えない日々
- 運命の出逢い 〜復縁のきっかけ〜
- 日付の分かる占いで…
- 運命の日 〜復縁の前兆〜
- 結婚してる? 私の片想いなの?
- 恋愛運が高まる日、復縁そして結婚へ
元カレのSNSを見つけた恋愛難民の私
彼女だった私が元カレ・山口リュウジ君のSNSをみつけたのは、本当に偶然だった。
ふと母校のSNSアカウントを見ていた時、フォローしている人の中に元カレのフルネームを見つけてしまい、辿ってみるとどうやら彼本人。
元カレは高校生のときに付き合ったいわゆる初恋の人で、付き合っていたと言ってもグループでデートに行ったり、一緒に帰ったりするくらい。なんだか気まずくなって、大学進学のときに自然消滅してしまった。
意外と頻繁につぶやく彼のアカウントを、1日に何度もアクセスしてしまう。
元カノとなってしまった私が、まるで何かに引き寄せられるように…。
別に復縁したいとは思っていない、元カノとして、元カレがどう成長したか見ていたかっただけと思っている。
元カレに彼女はいないみたい!
『仕事疲れたー。部長やばい』
他愛のないことしかつぶやかないし、ほぼフォローされていないところを見るとあまり知り合いにも言ってないようだった。それだけ彼の核心に近い感じがして、ドキドキしてしまっていた。
今、彼女いないんだ…このつぶやきを見たとき、嬉しくて飛び跳ねてしまった。やっぱり元カレのことを今でも好きなんだ。この頃から復縁を意識し始めていた。
占いに出てる“思ってもみなかった縁”
そろそろ眺め始めて3ヶ月が経つ。最近、元カレのSNSアカウントを眺めているのは自分でも少し気持ち悪いな、と思い始めた。いっそ消してしまったほうがいいのでは…そう考えながらもSNSを見ていると、あるサイトが目に入った。
『巡ってくる恋のチャンス 逃さないでください』
よく見てみると恋愛占いのようだった。そういえば学生の頃、よく友達と雑誌についていた占いでキャーキャー言ったな…。懐かしい気持ちになって特に理由なく登録し、とりあえず今月の占いでも見ることにした。
小さくても何か行動を起こすことが、やがて大きな幸運を呼び寄せることになる。
ふうん…どんなことが起こるんだろう…?
占いは好きだけど「恋のチャンス」と言われても、にわかに信じ難い。私は「思ってもみなかった縁って何だろう」と、ベッドに横たわり天井を見上げていた。
近づいてくる彼との運命
『いいとこ見つけたから今度行こ。都心の方が通いやすいよね』
私も最近運動不足だし行かなくっちゃ…もし今入会したら会えるかな?
そう思って、地元の駅ではなく職場に近いターミナル駅のジムを探して体験入会することにした。
もしも出会えたら、これが占いで言っていた“運命”かもしれない。
音信不通の片想い? 彼と会えない日々
早速翌日に期待してスポーツジムに行ったものの、彼の姿はもちろんなかった。
でも、やってみると案外楽しくて、ヨガをした後ウォーキングしたりと段々ジムで過ごす時間が増えていった。
彼の方は意外と気が進まないみたいだ。
がんばってね、と心の中で呼びかけると、着替えを持って今日もジムに出かけることにした。
運命の出逢い 〜復縁のきっかけ〜
一通りのメニューをこなして自販機の前で水を飲んでいると、とうとう、占い通り彼と会ってしまった。
「あれ、もしかして霧島? 霧島由香里??」
「山口リュウジ君…?」
「うわー!久しぶり!え、このジムに通ってる?」
山口リュウジ君はSNSで言っていた通り、あまりこのジムに通えてないらしい。仕事が忙しくて…と言っていたけど、つぶやきを見る限りそうでもなさそう。
「じゃあまた、今度会ったらごはんでもいこう」
「うん、またね」
せっかくのチャンスだったのに、そう言って別れてしまった。
日付の分かる占いで…
山口リュウジ君がジムに来るのは週1回程度、来る曜日も時間もまちまちらしい。しかも、つぶやきによると最近フットサルを始めたらしくもう退会を考えているようだった。
なんとかもう一度会えたらいいけど、どうにもならない…。
そういえば、占いサイトに登録したな、と思い出してヒントを探しに行くことにした。
色々とみていくと、日付の分かる占いがある。
スポーツジムに縁がある
3日後にスポーツジムの結果が出てる!思い切ってこの日に行ってみることにした。
運命の日 〜復縁の前兆〜
当日、ジムでウォーキングをしていると、隣に山口リュウジ君が立っていた!
「あれ、霧島歩いてるの?じゃあ俺走ろう」
「山口リュウジ君、急にどうしたの」
「先に止まったほうがこの後おごりね!」
山口リュウジ君はなんだかすごい速度で走り出してしまったけど、黙々と歩き続けることにした。
もしかしてこの後ご飯行けるのかな…そう思いながら歩いた30分はあっという間だった。
「あー無理無理、降参~」
「えっと、お疲れ様」
「約束通りおごるわ、ロビー待ち合わせね」
「ありがとう…」
なんだか気軽に連れ出されたけど、実は15年ぶりのデートだ。
結婚してる? 私の片想いなの?
15年前からほとんどしゃべっていなかったけど、共通の友人が多いせいか話題には事欠かなかった。あれこれ喋っていると、お互いになんだか酔っぱらってしまった。
「今日ちょっと飲みすぎたかも…急に運動したし」
「山口リュウジ君お水もらおうか?」
「うん…ねえ、霧島ってまだ独身なの?」
…そうか、お互い独身かどうか聞かなきゃいけない年だ。
なぜそんなこと聞くの…? 彼の心理が読めなかった。
もし付き合う気があるなら「彼氏いる?」って聞くんじゃないだろうか。あのアカウントは山口リュウジ君のだと思ってたけど、そうじゃなくて彼は結婚してるかもしれない。SNSでは独身っぽいことを言ってるけど、本当は結婚してる人かもしれない。結婚して、子どもがいるのかもしれない。
頭の中でぐるぐると色々な可能性が駆け巡って、どうしても拭い去れない。
「…結婚してないよ、独身だよ。あ、私そろそろ帰らなきゃ」
鏡ごしに少しだけ見えた呆然とする山口リュウジ君。そんな彼を置いて、足早に店を後にした…。
恋愛運が高まる日、復縁そして結婚へ
私はうんざりするくらい嫌な女だ。せっかく山口リュウジ君が誘ってくれたのに。
ずっとアカウントを見続けるくらい好きだったくせに。
なんだか癖になってしまった占いだけど、何が恋愛運が高まる日なんだか、と思ってしまう。少し泣きながら地下鉄の階段を駆け下りると、改札の前に山口リュウジ君が立っていた。
謝らなきゃ、と思うけど全然声にならない。一応山口リュウジ君の目の前で立ち止まったけど、しゃべったら泣いてしまいそう。
「ごめん、俺なんか気に障ること言ったかもって」
「…ううん」
「焦って変なこと言った。微妙な感じで別れちゃったけど、ずっと霧島さんのこと好きで、正直今も好きだから」
…あれ?今好きって言った?
「だから、探り入れようと思って独身?って聞いただけなんだ」
…好きって言ったっけ?
「もし旦那も彼氏もいないんだったら付き合ってほしいけど、どうかな…」
びっくりして思わず顔を上げると、時間は午後11時58分。さすが、私の恋愛運が占いで一番高い日だ…と思った。
それから
恥ずかしながらすぐ子供ができてしまい半年で電撃結婚した。
高校からの友達は、私が結婚したことに、ものすごくびっくりして「まるで映画やドラマみたいだね」「これが純愛カップルかぁ」と大騒ぎだったけど、全然そんなことはない。
ただ、あの占いがなかったら思い切ってジムになんて入会しなかったし、今こうして結婚もしていないかもしれない。その半年で妊娠して子どもまで…。
旦那のSNSアカウントを見ていることは今でも秘密にしてる。不倫を疑わずに済むので、今も3日に1回くらいはのぞいてしまう。
あなたも巡ってくる恋のチャンスを逃さないで。